「使いやすさ検証」方法

有効な検証方法とは

認証基準を満たすためには、利用者とモノとのコミュニケーションを科学的に検証するタイプの「思考発話法」や「パフォーマンス測定」、「観察」などの調査法を採用する必要があります。
どの調査法を採用する場合でも、科学的根拠として充分な調査設計、運用方法により行うことが求められます。
 
認証基準として不適切な調査の実施を防ぐと同時に、利用者への調査方法における信頼性を高める事を目的として、リアル・ユーザー・テストとしての成立条件を満たすことが定められています。
 
※2009年10月まで有効な調査手法として「ユーザビリティ調査」という表現をしていましたが、2009年11月から、ユーザビリティ調査手法を用いるだけでなく、「リアルユーザーテスト」に適合することも認証の基準として追加されましたので、表現方法を「リアルユーザーテスト」に統一しています。従来の「ユーザビリティ調査」という表記では、その意味する適用範囲が広く、認証基準として不適切な調査の実施を防ぐと同時に、利用者への調査方法における信頼性を高める事が目的です。


リアル・ユーザー・テスト(実利用者実験)とは

画像:リアルユーザーテスト
リアル・ユーザー・テスト(実利用者実験)は、「一般利用者による評価」を「適正に」行うための専門的な調査手法です。

一般利用者に実際に使ってもらい、観察者が思考と行動を分析することで「使いやすさ」を測定します。

使いやすさ検証済認証を取得するためには、第三者による精度の高い調査を実施することが必要です。具体的には9つの成立条件を満たした「リアル・ユーザー・テスト」の実施が求められます。

リアル・ユーザー・テスト(実利用者実験)9つの成立条件

下記の成立条件は、調査結果への信頼性を確立するため、日本ユニバーサルデザイン研究機構が様々な分野の製品、建築、サービス、等においてその有用性を確認し、体系化したものです。

リアル・ユーザー・テストを実施できる分野は広く、一般利用者向け製品、業務用製品、公共施設、商業施設、工場、サイン、印刷物、取扱説明書、サービス、各種パッケージ、容器等改善が必要な「物」、「空間」、「サービス」への実施が可能です。

9つの成立条件

  1. 実利用者が被験者である。
  2. 被験者は、実際の情報入手方法と同じ方法で情報を入手する。
  3. 実際の利用状況を正確に再現する。
  4. 観察はその商品を企画、設計、デザインした者が中心となって行う。
  5. 観察者は、「思考」と「行動」、そしてそれらの原因について「理由」ではなく「誘発する要素」を見抜けるだけの観察技術を身につけている。
  6. 調査担当者及び被験者の募集と管理は、製品の提供者ではない利用者にとって第三者的立場の者が行う。
  7. 調査手法については、思考発話法とパフォーマンス測定法と観察法を状況に応じて使い分ける。
  8. 被験者の行う「結果」ではなく「思考と行動」から法則性を導いている。
  9. 調査担当者が、妥当性のある調査結果を得るために必要な知識を持っている。


(日本ユニバーサルデザイン研究機構「リアル・ユーザー・テストの成立条件Ver.1.1」)

リアル・ユーザー・テストに用いる調査方法の紹介

リアル・ユーザー・テストに用いる調査手法の一例のご紹介です。

思考発話法

認証取得のための検証法さまざまな発見ができ、とても適している

画像:思考発話法
思考発話法は、「使いにくさの原因」を洗い出すために一番適している調査です。
調査モニターが製品を使いながら、考えていること、思ったことを常に声に出していき、それを実験担当者、プロジェクトメンバー全員が記録し、デブリーフィングで評価、分析します。
どのような思考のもとで作業をしているのか、何を不快に感じるかなど、さまざまな発見ができます。
調査対象者にとって、思考発話法は珍しい調査なので、調査開始前に行う、実験担当者による研修なども含め、環境をコーディネートする必要があります。
※構成的対話法、回顧式テスト法、コーチング法などは、思考発話法の応用です。

観察

認証取得のための検証法実際の使用状況や利用者の要望を知ることができ、適している



画像:観察
観察は、実際の利用者の利用状況確認と使いやすさ向上の糸口を発見する為の調査です。実際の利用者の利用現場に訪問し、日常の使用状況を観察します。
実際の使用状況が確認でき、利用現場での利用者の要望を知ることができます。
発売後のフォロー調査にも効果的です。
少ない人数で、低コストで実施できますが、一般的に利用者のアポイントを取ることが困難です。

パフォーマンス測定

認証取得のための検証法正確で的確なデータを得る場合に適しているが、使いにくさの要因を確認することには適していない

画像:パフォーマンス測定
パフォーマンス測定は、対象者にテスト作業をしてもらい、使いやすさを数値化し、比較するための調査です。
かかった時間とエラー回数を測定します。
エラーとは、作業の目標達成に関係ないすべての行動を指します。
パフォーマンス測定は、正確で的確なデータが得られますので、作業間での比較や、設定した目標への到達度などを確認できます。しかし、使いにくさの要因を確認することには適していません。

アンケート・インタビューについて

認証取得のための検証法認められません。リアル・ユーザー・テストとあわせて実施することで効果を発揮します。



アンケート、インタビューのみによる検証は、一方的であり商品と利用者との間に発生するコミュニケーションを検証することができないという解く正常、認証取得のための検証法としては認められません。
リアル・ユーザー・テストとあわせて実施することで効果を発揮します。


リアル・ユーザー・テスト実施にあたって

この調査は、認証商品の提供者自身も調査に関する知識を持っている必要があります。

プロジェクトメンバーへは「調査前の研修」等が必須ですので、計画的にプロジェクトの準備を進めることが必要です。

リアル・ユーザー・テストの基本は、「実際の利用者」に、「実際の利用状況、情報の把握状況」にできるだけ近い形で、利用してもらい、それを観察することです。
そして、その調査方法には色々な種類があり、それぞれ「わかること・判らないこと」があります。
例えば、「アンケート調査」で「まだ使ったことがない商品に関する意見」を調べても、確からしさが望めません。しかし、利用経験のある商品の満足度や印象の調査には効果的です。

それぞれの調査法の特性を知ることで、「何を知りたいか」にあわせて、適切な調査方法を選び、有効性の高い調査を行うことが必要になります。

 

調査方法の選択のポイント

調査方法の選択には、経験と専門知識が必要です。
実施の際には事前に当機構へご相談頂くか、専門機関へお問い合わせいただくことを推薦しています。
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